どうして歯が早く動くのですか? 生物学的に利にかなった力のかけ具合が 歯とその周辺組織に無駄な負荷をかけずに済むからです。

Dr. Dwight Damon

歯の構造

歯が動く仕組み

右図で示す通り、歯は「歯槽骨(しそうこつ)」と呼ばれる歯ぐきの中の堅い骨と、その歯槽骨と歯の間でクッションの働きをする「歯根膜(しこんまく)」によって支えられています。
堅いものを噛み砕いたり、強い食いしばりにも耐える歯が、矯正治療によって動く、それもセルフライゲーションブラケットなら早く動くなんて不思議だと思いませんか?
実は歯は上下(かむ方向)の力には相当強いのですが、ブラケットとワイヤーでかかるような、左右や前後の力には弱いという性質があります。
また、歯に弱い力をかけ続けると、歯はその方向に徐々に動いていきます。これは歯に一方向の力を加えると、片方の歯根膜はつぶされ、反対側は伸ばされます。その状態の時、つぶされた方の歯槽骨は少しずつ破壊され、逆に伸びた側では隙間を埋めるように歯槽骨が増加し、歯の根の状態をバランスよく保とうと作用するのです。 矯正治療では、歯が持つこの生体メカニズムを利用して歯を動かしているのです。

ローフォース・ローフリクションが歯の移動を早める理由

「2.装置の構造とメリット」のページでも紹介した通り、ローフォース・ローフリクションを実現する「デーモンシステム」や「クリッピー」といったセルフライゲーションブラケットは、歯に移動力を加えるワイヤーを完全には固定せず「遊び」がある状態で維持します。このため歯や歯根膜、歯槽骨にかかる力はごく弱く、痛みが少ないことはお分かり頂けると思います。
さらにDr.デーモンは「歯とその周辺組織(歯根膜・歯槽骨)は緩やかな力を加えた方が生物学的に早く歯が移動する」という驚くべき効果をローフォース・ローフリクションの効果として発見したのです。
これは、緩やかな力(ローフォース)は、

歯の移動に必要な歯槽骨の吸収と再生が理想的なスピードで行われる

と結論づけられました。

それまでは「しっかり留め」、「大きな力を加え」、「力づくでどんどん引っ張る」のが矯正方法の主流で、私自身もそう考えていた矯正歯科医のひとりでした。しかしDr.デーモンは、その方法では歯の周辺組織に生体が持つ以上の負荷を掛けてしまい、周辺の血流が滞って酸素供給が減り、歯槽骨や歯根膜に壊死が起こってしまうと説明しています。 「デーモンシステム」や「クリッピー」は、「生物学的に理にかなった矯正装置」なのです。

ブラケット

デーモンシステム使用。内側に寄っていた歯列が1割横に広がりきれいに並びました。セルフライゲーションでなければ抜歯でしか治らない例です。

他にもある、ローフォースローフリクションの優位性

抜歯の可能性を減らす
抜歯を避ける場合、歯をきれいに並べるために歯槽骨全体を横方向に拡大する必要があるのですが、従来の装置では骨だけでなく歯そのものが斜めに傾いて広がってしまう傾向がありました。
セルフライゲーションブラケットは歯の傾きには影響せず歯槽骨部分を横に広げること(側方拡大)を得意としており、これにより抜歯の可能性が減少しました。
歯周組織の弱い方もOK
ローフォース(弱い力)により、歯、歯ぐき、あごの骨にかかる力が緩やかなため、歯周病や顎関節症などを抱える方にも使えます。ただし症状の程度にもよりますので事前の判断が必要です。

次に、2大セルフライゲーションブラケット
[デーモンシステム]と[クリッピー]の違いを確認しましょう。

デーモンVSクリッピー